大阪地方裁判所 昭和63年(ワ)9804号 判決 1991年9月30日
原告 三成鉄工株式会社
被告 森松工業株式会社 外一名
主文
一 被告株式会社京都総合食品センターは、原告に対し、金一二万円及びこれに対する昭和六三年一一月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告株式会社京都総合食品センターに対するその余の請求及び被告森松工業株式会社に対する請求を棄却する。
三 訴訟費用は、原告に生じた費用の一二分の一と被告株式会社京都総合食品センターに生じた費用の六分の一を同被告の負担とし、原告と同被告に生じたその余の費用と被告森松工業株式会社に生じた費用を、原告の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告の請求
一 被告森松工業株式会社は、原告に対し、金一六九万一九一二円及びこれに対する昭和六三年一一月一九日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分(民法所定)の割合による金員を支払え。
二 被告株式会社京都総合食品センターは、原告に対し、金四二万四四七八円及びこれに対する昭和六三年一一月一九日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年五分(民法所定)の割合による金員を支払え。
三 被告らは、別紙公告目録記載の謝罪広告を朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞及びサンケイ新聞の各全国版に各一回ずつ掲載せよ。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
第二事案の概要
一 原告の権利
原告は、左記の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)をその登録日から平成二年一二月一〇日まで有していた(争いがない。別添実用新案公報-以下「公報」という-及び実用新案法一三条で準用する特許法六四条の規定による補正の掲載公報参照)。
1 考案の名称 受水槽
2 出願日 昭和五〇年一二月一〇日(実願昭五〇-一六七七五五)
3 出願公告日 昭和五六年四月二三日(実公昭五六-〇一七五八三)
4 登録日 昭和五七年一〇月二八日
5 登録番号 第一四五七二三五号
6 実用新案登録請求の範囲
「ステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し且つ両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させ、内部水位を常時補助水槽内にあらしめるようにしたことを特徴とする受水槽。」
二 本件考案の構成要件(争いがない)
1 ステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し、
2 且つ両水槽に夫々水供給管と水位調製装置を具備させ、
3 内部水位を常時補助水槽内にあらしめるようにしたことを特徴とする
4 受水槽。
三 本件考案の作用効果(争いがない)
1 本件考案はステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し且つ両水槽にそれぞれ水供給管と水位調整装置を具備させたものであるから、主水槽内は補助水槽部の水位調整装置の作用により常時満水状態にあり、従って主水槽には全く腐食を生じないと共に、補助水槽部には従来と同様腐食を免れないが、この補助水槽は小さいため取替えの作業性並びに取替費を著しく軽減し得る。
2 取水配管(水供給管)並びに水位調整装置を上下の水槽にそれぞれ具備せしめたことによって、水位を確実に補助水槽の所定水位に保持させることができる。
四 被告らの行為
1 被告森松工業株式会社(以下「被告森松」という。)は、被告株式会社京都総合食品センター(以下「被告センター」という。)から給排水衛生空調設備一式の工事(以下「本件工事」という。)を請負っていた須賀工業株式会社(以下「須賀工業」という。)から注文を受けて、業として、別紙物件目録記載の受水槽(以下「ハ号物件」という。)の本体、すなわちハ号物件のうち給水装置及び水位調整装置等配管のない状態のもの(以下「ハ号受水槽本体」という。)を、昭和六一年一〇月二九日から同年一一月一一日にかけて被告センター肩書地所在の京都府南部総合卸売市場敷地内に組立・設置して、これを須賀工業に販売した(乙一、証人山下務、同川瀬伸介、検証〔証拠保全〕の結果、弁論の全趣旨)。
2 須賀工業は、同年一二月ころ、宇治市公認水道工事業者である山田工業に発注してハ号受水槽本体につき給水装置及び水位調整装置等の配管工事をさせて、ハ号物件を完成させた(乙一、証人山下務、検証の結果、弁論の全趣旨)。
3 被告センターは、昭和六三年六月まではハ号物件を使用していたが、同年七月ハ号物件の配管(給水機構)を別紙図面一記載の配管(給水機構)に改造し(以下「ハ号改造物件」という。)、以後これを使用している(乙一、二、検証の結果、弁論の全趣旨)。
五 ハ号物件の構成
ハ号物件の構成は次のとおり分説するのが相当である。
1 ステンレス鋼製主水槽1aの上部に小なる補助水槽1bを内部連通状に形成し、
2 主水槽1aには、補助水槽1b内を通して主水槽用の水供給管2aと水位調整装置3aとを、補助水槽1bには、補助水槽用の水供給管2bと水位調整装置3bとをそれぞれ具備させ、
3 内部水位を常時補助水槽内にあらしめるようにした
4 受水槽。
六 ハ号物件は、右構成を有することにより、次の作用効果を奏するものと認められる。
1 ステンレス鋼製主水槽1aの上部に小なる補助水槽1bを内部連通状に形成し、主水槽用の水供給管2aと水位調整装置3aとを、補助水槽用の水供給管2bと水位調整装置3bとをそれぞれ具備させたものであるから、主水槽1a内は補助水槽用の水位調整装置3bの作用により常時満水状態にあり、従って主水槽1aには全く腐食を生じないとと共に、補助水槽1bには従来と同様腐食を免れないが、この補助水槽1bは小さいため取替えの作業性並びに取替費を著しく軽減し得る。
2 上下の各水槽1b、1a用の水供給管2b・2a及び水位調整装置3b、3aをそれぞれ具備せしめたことによって、水位を確実に補助水槽1bの所定水位に保持させることができる。
七 争点
1 本件は、原告が、被告森松のハ号受水槽本体製造・販売及び被告センターのハ号物件使用はいずれも本件実用新案権を侵害する行為であると主張して、(一) 被告森松に対し、原告が本件考案の実施品の販売を逸したことによる損害金一六九万一九一二円(右実施品の見積価格八四五万九五六〇円×原告の利益率二〇パーセント)及び遅延損害金の支払、(二) 被告センターに対し、実施料相当損害金四二万四四七八円(但し、原告の主張は前記八四五万九五六〇円×本件考案の実施料率五パーセント=四二万二九七八円であるが、原告の請求額は前記のとおりである。)及び遅延損害金の支払、(三) 被告らに対し謝罪広告を求めた事案である。
2 本件の主たる争点は、左記のとおりである。
(一) ハ号物件の構成2は、本件考案の構成要件2を充足するか。
(二) 被告森松の直接侵害の成否(須賀工業との共同不法行為の成否、すなわち同被告は、須賀工業と共同して本件実用新案権を侵害したか。)
(三) 被告森松の間接侵害の成否(ハ号受水槽本体は、本件考案に係る受水槽の製造にのみ使用する物か。)
(四) 被告センターのハ号物件使用は、「業として」本件考案を実施する行為か。
(五) 原告の損害
(1) 損害額
(2) 謝罪広告を必要とする業務上の信用毀損の有無
第三争点等に対する判断
一 争点(一)(ハ号物件の構成2は、本件考案の構成要件2を充足するか。)
1 ハ号物件の構成1ないし4は、本件考案の構成要件1ないし4を充足し、その結果、ハ号物件は本件考案と同様の作用効果を奏するから(第二の二、三、五、六)、ハ号物件は本件考案の技術的範囲に属することは明らかである。
2 この点につき、被告らは、次のとおり主張する。
(一) 本件考案の構成要件2の「両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させ」とは、「各個の水槽(主水槽及び補助水槽)にそれぞれ水供給管と水位調整装置を接続し(取付け)」との意味であり、補助水槽に二個の水供給管及び水位調整装置を接続したものは含まれないから、補助水槽に二個の水供給管及び水位調整装置を接続したハ号物件(構成2)は、本件考案の構成要件2を充足しない。
(二) 本件考案の配管方法では、主水槽用の水供給管が主水槽に直接開口しており、吐水口空間(水供給管の開口部と上部定水位との間の空間)を設ける余地がなく、飲料水については水道局の許可がおりず実用化できないものである。すなわち、本件考案では主水槽用の水供給管が直接主水槽へ開口されるので、主水槽の水位が右水供給管開口部より高い時に水位調整装置が故障し、水源の圧力が低いと、サイホン現象により、又は配管の状態によってはサイホン現象なくして、水は水源の方へ逆流することになり、一旦需要者のタンクに入った水が水源へ逆流するため、水源汚染のおそれがあるが、かような配管方法は水道法及び建築基準法で禁止されている(水道法一六条に基づく同法施行令四条七号、建築基準法三六条に基づく同法施行令一二九条の二の二第二項二号参照)。これに対して、ハ号物件は、主水槽用の水供給管2aを補助水槽1b内の上部定水位5bより上方で開口することにより、容易に別紙図面二記載の配管をした受水槽(以下「ニ号装置」という。)に改造することができる。ニ号装置の配管方法によれば、主水槽用の水供給管(同図3)は、一旦補助水槽(同図2)内へ開口されるとともに、それが上部定水位(同図UL)より上方であるため、吐水口空間が設けられることになり、本件考案のように直接水槽内の水が主水槽用の水供給管を水源に向って逆流することはない。従って、ニ号装置に容易に変更し得るハ号物件は、本件考案とは重大な作用効果の差異を有している。
3 しかしながら、被告らの右各主張は、次の理由によりいずれも採用できない。
(一) 本件考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書(実用新案法一三条において準用する特許法六四条の規定による補正後のもの。以下「本件明細書」という。)中の本件考案の作用効果に関する、「本件考案……の受水槽はステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し且つ両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させたものであるから、主水槽内は補助水槽部の水位調整装置の作用により常時満水状態にあり、従って主水槽には全く腐食を生じない」との記載(公報2欄34行~3欄3行)によれば、本件考案は、主水槽を常時満水にすることにより主水槽の腐食を防止しようとするものであり、この目的達成のため、「内部水位を常時補助水槽内にあらしめるようにした」(構成要件3)のであり、この水位を維持するために、両水槽にそれぞれ水供給管と水位調整装置を設けたのである(構成要件2)。すなわち、本件考案において、水供給管と水位調整装置は、受水槽の内部水位を所定位置に維持させるためのものであり、その接続位置(取付位置)が重要なのではなく、その機能が重要なのである。それ故、本件考案の構成要件2の「……夫々……具備させ」とは、水供給管と水位調整装置の取付位置を限定したものではなく、「主水槽用及び補助水槽用にそれぞれ機能する水供給管と水位調整装置とを備え」との意味に解すべきであり、本件明細書には、実施例として補助水槽用の水供給管と水位調整装置のみを補助水槽に取付け、主水槽用の水供給管と水位調整装置は直接主水槽に取付けたものが記載(公報2欄16~33行、4欄3~8行、2頁図面)されているにすぎないが、本件考案は、右実施例に限定されるものではない。ニ号装置のように、補助水槽に二個の水供給管(別紙図面二3、8)及び水位調整装置(同図6、9)を設置(接続)したものも、その技術的範囲に含むのである。従って、ハ号物件は、その補助水槽(1b)に取付けられた二個の水供給管(2a、2b)と水位調整装置(3a、3b)のうち、一個は主水槽用の水供給管(2a)と水位調整装置(3a)として機能しているから、補助水槽はもちろんのこと、主水槽(1a)にも水供給管と水位調整装置を備えており、本件考案の構成要件2を充足する。
(二) 本件考案の配管方法では、主水槽用の水供給管が主水槽に直接開口しており、逆流防止のための吐水口空間を設ける余地がないとの被告らの主張は、本件考案の技術的範囲が前示の実施例に限定されることを前提としている点において、既に理由がない。すなわち、本件考案の目的は、水道水からの塩素ガスの発生に基づく腐食を防止し、右腐食に対する補修が可能なステンレス鋼製受水槽を提供することにあるのであって(公報1欄23行~2欄15行、同欄34行~3欄6行)、具体的な給水機構を提供することにあるのではないから、逆流問題は、本件考案の技術的範囲とは無関係である。
二 争点(二)(被告森松の直接侵害の成否-須賀工業との共同不法行為の成否)
1 原告は、ハ号物件は、被告森松がハ号受水槽本体を製造し、同被告の主導のもとに十分協議した上で須賀工業が下請業者に右本体の配管工事をさせて完成させたもの、すなわち両者の共同行為により完成させたものであると主張する。
2 ところで、ハ号物件の受注から完成までの経緯は、次のとおりと認められる(甲四〇、乙一、証人山下務、同川瀬伸介、同藤原康剛、検証の結果、弁論の全趣旨)。
(一) 被告センターから本件工事を請負っていた須賀工業は、京都府南部総合卸売市場に設置する受水槽のうち給水装置及び水位調節装置等配管のない状態のもの(以下「本件受水槽本体」という。)に関して、満水式受水槽との仕様に基づき、株式会社鈴木製作所、原告及び被告森松の三社から見積書を提出させた。
(二) 原告は、昭和六〇年一一月一九日ころ須賀工業に本件受水槽本体の見積書を提出し、その後、原告の本件受水槽本体受注活動担当者(有田守)が満水式受水槽について知識のなかった須賀工業担当者(山下務)に、(1) 原告が本件実用新案権を有すること、(2) 本件考案の受水槽は満水式(満水方式)であること、(3) 満水式受水槽とは水位調整装置であるボールタップを二個上下に設けて、まず下のボールタップによって主水槽用の水供給管から主水槽内の定水位まで給水し、次いで補助水槽用の水供給管から給水し、上のボールタップによって補助水槽の定水位まで水位を上げるものであることを説明した。
(三) その後、被告森松の本件受水槽本体受注活動担当者(川瀬伸介)は、須賀工業の山下に満水式受水槽について、ボールタップ一個で満水にする方法、すなわち定水位弁を有する主給水管から給水してボールタップが上昇して定水位弁を制御するところまで来たら主給水管からの給水を止めて主水槽を満水にする方法があることを説明した(なお、別紙図面三記載の配管をした受水槽-以下「ホ号装置」という-は、被告森松が原告の本件訴訟提起後に他から受注して、製造したものであるが〔乙一四、証人川瀬伸介〕、ホ号装置の定水位弁用副弁は、定水位弁を抑制して給水管の給水を制御する水位調整装置であって、ボールタップに相当するものであるから、右説明内容とほぼ符合する満水式受水槽である。)。
(四) 須賀工業は、見積価格の最も安かった被告森松に本件受水槽本体を発注した(因みに、同被告のハ号受水槽本体受注価格は四六七万円であり、原告の本件受水槽本体の見積価格は八四五万九五六〇円であった。)。
(五) 須賀工業は、原告及び被告森松から得た満水式受水槽に関する知識をもとに、被告森松から説明のあったボールタップを一個しか取付けない方法は、原告から説明のあったボールタップを二個取付ける方法に比べて、補助水槽内に水位を保持する能力が低く、しばしば水位が主水槽内に下がるおそれがあると判断して、ハ号受水槽本体にボールタップを二個(水位調整装置3a、3b)取付ける内部配管方法を採用した。
(六) 被告森松は、本件工事の設計監理者である株式会社岡設計(以下「岡設計」という。)及び須賀工業と、配管接続口(タッピング)の大きさ(径)、個数及び設置位置等について打合わせをしたうえで、補助水槽の側面の三箇所に配管接続口を設けたハ号受水槽本体を組立・設置した。
(七) 山田工業は、須賀工業の山下の指示に基づき、ハ号物件の配管工事を施工し、ハ号受水槽本体にボールタップを二個(水位調整装置3a、3b)取付けた。
3 しかしながら、被告森松がハ号受水槽本体を組立・設置した当時、補助水槽の側面の三箇所に配管接続口を設けたハ号受水槽本体に対する内部配管方法はハ号物件の方法以外にもあったところ(後記三4参照)、須賀工業がハ号物件の内部配管方法を採用したことについて被告森松に明確な説明をした形跡や、ハ号物件の配管工事を担当した山田工業が被告森松と内部配管方法について打合せをした形跡はなく、結局、被告森松がハ号受水槽本体を組立・設置する段階において、その内部配管方法を具体的に認識していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、右2認定の経緯によれば、須賀工業が自らの裁量によってハ号物件の内部配管方法を決定したと認めざるを得ないのであって、本件実用新案権を侵害するハ号物件を完成させるにあたり、被告森松が須賀工業と共同して行為したことは到底認められないし、須賀工業が右内部配管方法を採用してハ号物件を完成するにあたり、被告森松がこれを幇助したとも認められない。
4 従って、被告森松が須賀工業と共同して本件実用新案権を侵害(共同不法行為)したとは認められない。
三 争点(三)(被告森松の間接侵害の成否-ハ号受水槽本体は、本件考案に係る受水槽の製造にのみ使用する物か。)
1 原告は、ハ号受水槽本体は、汎用性のある受水槽本体ではなく、被告森松が満水式という特別仕様に基づいて受注し、須賀工業の採用したハ号物件となるべき仕様に基づいて組立・設置(納入)したものであるから、右設置(納入)当時、完成品であるハ号物件にのみに使用されるものであり、他の用途に使用されるものではなかったと主張する。
2 ところで、原告は、(一) 業界誌掲載の広告等で、本件考案の受水槽を「満水方式」又は「満水式」と宣伝し(甲七、八、一〇~一七、弁論の全趣旨)、(二) 業界誌掲載の論文で、「満水方式とは主水槽と補助水槽の二重構造、すなわち主水槽は満水となり水量は補助水槽で制御する方式」であると定義し(甲九)、(三) カタログや業界誌掲載の広告で、満水方式の給水のしくみについて、主水槽に連結した補助水槽に給水管、オーバーフロー管などを備え、槽内の最高水位を補助水槽内に保つようにコントロールしており、給水管の直径が八〇A未満の場合は、補助水槽用の水位調整装置である補助ボールタップは取付けず、主水槽用の水位調整装置である主ボールタップだけで主水槽に給水し、給水管の直径が八〇A以上の場合(引込給水管の径が大なる時)は、主ボールタップで主水槽に給水し、主水槽が満水状態になると、補助ボールタップ(二五A~四〇A)で最高水位まで給水するようになっていると説明している(甲五、七、八、一〇~一七、証人藤原康剛)。すなわち、原告は、水位調整装置が一個しか取付けられていないものであっても、内部水位を常時補助水槽内にあらしめるようになっていれば、本件考案の技術的範囲に属すると認識している(証人藤原康剛)。原告の右認識によれば、ハ号改造物件、ホ号装置及び別紙図面四記載の配管をした装置(以下「ヘ号装置」という。)も本件考案の技術的範囲に属することになる。
3 しかしながら、水位調整装置が一個しか取付けられていないものは、本件考案の「両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させ」との構成(構成要件2)を欠いており、「取水配管(水供給管)並びに水位調整装置を上下の水槽にそれぞれ具備せしめたことによって、水位を確実に補助水槽の所定水位に保持させることができる。」との作用効果(作用効果2)を奏さないことは明らかである。右のように、内部水位を常時補助水槽内にあらしめる満水式受水槽の配管(給水機構)については、種々の構成が考えられるが、本件考案は、かかる満水式受水槽のうち、水位調整装置について主水槽用と補助水槽用の合計二個の水位調整装置を具備するものに限定したものである。従って、原告の右認識は担当ではなく、ハ号改造物件、ホ号装置及びヘ号装置はいずれも本件考案の技術的範囲に属さない。
また、原告の申立てにより本件証拠保全手続として昭和六三年六月一六日になされたハ号物件等の検証の翌月には、ハ号物件からハ号改造物件への改造がなされており、右改造(配管方法の変更)は容易になし得るものである(甲三、乙一、二、検証の結果、弁論の全趣旨)。
4 そうだとすれば、被告森松が、ハ号受水槽本体を京都府南部総合卸売市場に組立・設置した当時、補助水槽の側面の三箇所に配管接続口(タッピング)を設けたハ号受水槽本体に対する配管方法としては、本件考案の技術的範囲に属するハ号物件の配管方法のみならず、右技術的範囲に属さないハ号改造物件の配管方法を採用することも可能であったから、ハ号受水槽本体は本件考案の受水槽の製造にのみ使用するものとは認められない。
5 この点につき、原告は、ハ号物件からハ号改造物件への改造は、本来有していた補助水槽内に水位を保持する能力を低下させる不自然な改造(改悪)であり、社会通念上採用される配管方法ではないと主張する。
しかしながら、(一) 原告自身がこれまで製造、販売した満水式受水槽についてみても、その製造比率は、ボールタップ等の水位調整装置を二個取付けたものは全体の一パーセントを占めるにすぎず、ボールタップ等の水位調整装置を一個しか取付けないものの方が多数であること(証人藤原康剛)、(二) ハ号改造物件において、別紙図面一記載のB=手動給水口及びV=手動給水用バルブの設けられている管は、同図記載のA=定水位弁用パイロットボールタップが故障した時の予備給水管であって、全く無意味な配管ではないこと(乙二、証人川瀬伸介)、(三) ハ号物件の主水槽用の水供給管2aの直径は五〇Aであるが(検証の結果)、原告自身右のように給水管の直径が八〇A未満の場合はボールタップ一個の受水槽を製造販売していること(前記2(三))に照らすと、ハ号改造物件の配管方法は、社会通念上経済的、商業的ないしは実用的なものであると認められる。従って、原告の右主張は採用できない。
6 (原告の被告森松に対する請求の当否)
これまで判示してきたところによれば、その余の点(後記黙示の通常実施権許諾の抗弁、過失相殺の主張等)について判断するまでもなく、原告の被告森松に対する本訴請求はすべて理由がない。
四 争点(四)(被告センターのハ号物件使用は、「業として」本件考案を実施する行為か。)
1 被告センターは、京都府が出資し、第三セクター方式により設立された京都府副知事が代表者を勤める株式会社で、京都府南部全域の市民に対する食料供給の要になる卸売市場(京都府南部総合卸売市場)であり、ハ号改造物件に改造するまでの間、ハ号物件を同市場全体に水を供給する施設として使用していた(弁論の全趣旨)。被告センターの右事業内容からすると、同被告が水を使用する行為は、その事業に関連ある経済活動の一環としての行為であるから、同被告のハ号物件使用は、「業として」本件考案を実施する行為に該当し、本件実用新案権を侵害することになる。
2 被告センターには、右侵害行為について過失があったものと推定される(実用新案法三〇条、特許法一〇三条)。この点につき、被告センターは、同被告は受水槽の製造業者でも配管業者でもない最終消費者にすぎず、受水槽内部の配管(給水機構)について無関心であり、岡設計から本件受水槽の内部配管は別紙図面四記載のとおりなされるとの説明を受け、これを信じていたにすぎず、ハ号物件の内部配管を実際に知る機会もなかったと主張するが、右事情は、同被告の無過失を認めさせるに足る事情、すなわち前記推定を覆すに足る事業ということはできない。
3 (黙示の通常実施権許諾の抗弁について)
被告センターは、須賀工業は、本件受水槽本体を発注するにあたり、原告に対し満水式受水槽の構造について問合せをしており、これに対し、原告は満水式受水槽の配管方法を説明し、その後も須賀工業がハ号物件の製造をしていることを知りながら、完成するまで放置黙認したから、原告は被告らに対し、本件考案につき黙示の通常実施権を与えたものということができると主張する。
しかしながら、原告は、須賀工業からの要請で、昭和六〇年一一月一九日ころ本件受水槽の見積書を提出し、原告の有田が須賀工業の山下に満水式受水槽について説明したのは前記二2で判示したとおりであるが、その後、須賀工業から、本件受水槽本体の仕様をステンレス製の満水式からFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製のものに変更したとの連絡を受けたために、FRP製の受水槽を製造していない原告としては、その時点で須賀工業に対する受注活動を断念していたところ、昭和六三年六月に至って被告センターがハ号物件を使用していることを発見し、直ちに法的措置(本件証拠保全手続、本訴提起)をとったことが認められる(甲三、証人藤原康剛、検証の結果、弁論の全趣旨)。右の経緯に照らすと、原告が須賀工業のハ号物件製造を放置黙認したとは到底認められず、被告センターの右主張は採用できない。
4 以上によれば、被告センターは、前記侵害行為(不法行為)によって原告が被った損害を賠償する義務がある。
五 争点(五)(原告の損害額。謝罪広告を必要とする業務上の信用毀損の有無。)
1 (原告の損害額)
(一) 原告は、被告センターがハ号物件を使用したことにより被った損害の額として、本件考案の実施に対し通常受けるべき実施料相当額を請求し、右実施料は本件受水槽本体についての原告の見積価格八四五万九五六〇円の五パーセントが相当であると主張する。
被告森松のハ号受水槽本体の受注価格は四六七万円であるが(前記二2(四))、ハ号物件(本件受水槽全体)の現実の価格を明らかにできる証拠はない。しかし、ハ号物件は容量九六トン(検証の結果)のステンレス製受水槽(別紙物件目録)であるところ、「建設物価」一九八九年一二月号(甲四一、証人藤原康剛)に掲載された受水槽のうち、ハ号物件の容量とほぼ等しい一〇〇トンのものの実勢価格を列挙すると、(1) 被告森松製のMP-一〇〇(FRP製パネル単板型)=六〇九万一二〇〇円(組立費を含む公表価格一〇一五万二〇〇〇円×六〇%)、(2) 原告製のMS-一〇〇(ステンレス製パネル単板型)=七四九万二五〇〇円(架台組立費を含む公表価格九九九万円×七五%)、(3) 日綜産業製のNSP-一〇〇(ステンレス製パネル単板型)=七五九万円(組立費を含む公表価格一〇一二万円×七五%)、(4) 積水工事製のMQ-一〇〇(鉄製パネル単板型)=五五五万円(本体の公表価格七四〇万円×七五%)である。右各受水槽の実勢価格に、前示のとおり被告のハ号受水槽本体受注価格が四六七万円であることを合わせ考慮すると、ハ号物件(本件受水槽全体)の価格は六〇〇万円を下らないものと認めるのが相当である。
また、本件考案の実施に対し通常受けるべき金銭の額を算定するための実施料率についても、他によるべき資料がないので、当裁判所に顕著な国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の「実施料算定方式」を参照することとし、これによれば、実施料率は、「実施料率=基準率×利用率×増減率×開拓率」の算式によって求められる。そして、販売価格を基礎として実施料を算定する場合の基準率は、実施価値の上、中、下により四、三、二パーセントの中から選択されるものであるが、前記三3で判示した本件考案の技術的範囲と同5(一)で認定した原告の満水式受水槽の製造比率からすると、原告自身の本件考案の実施率は極めて低いことが認められるから、実施価値を「下」とみて基準率を二パーセントとするのが相当である。次に、利用率、増減率及び開拓率については、いずれも一〇〇パーセントから減ずべき特段の事情も認められないから、いずれも一〇〇パーセントとすべきである。そうすると、本件考案の実施料率は、前記算式により二パーセントとなる。右事実と昭和六三年七月には本件考案の技術的範囲に属しないハ号改造物件に改造した事実(侵害期間は長くても約一年半)等本件に現れた一切の事情を総合考慮すると、被告センターがハ号物件を使用したことについての実施料相当損害金は、前示のハ号物件の価格六〇〇万円に二パーセントを乗じて得られる一二万円と認めるのが相当である。
(二) 被告センターは、本件考案は受水槽に関するものであるが、全体の構成に特徴があるのではなく、専ら受水槽本体の完成後に施される配管系に特定の給水装置及び水位調整装置を有する配管系を用いた点にその技術的特徴がある、すなわち本件実用新案権においてはこの「給水装置及び水位調整装置」が寄与する率が極めて高く、実質的にこの部分が本件考案に係る部分であるから、(1) 本件実用新案権侵害の損害賠償額は、ハ号物件の「給水装置及び水位調整装置」の価格を基準として算定すべきであるし、(2) 国有特許権実施契約書の「実施料算定方式」に準拠する場合、利用率は、「利用率=給水装置及び水位調整装置の価格÷受水槽全体の価格」の算式により求めるのが相当であると主張する。
しかしながら、本件考案はステンレス製の受水槽の腐食を防止することを目的としたものであり(公法2欄34行~3欄3行)、本件考案においてはステンレス製の受水槽本体とその配管系とは一体不可分の関係にあるものである。従って、本件損害賠償額について、ハ号物件の「給水装置及び水位調整装置」の価格のみを基準として算定すべき理由はなく、右利用率についても、これを減ずべき理由はないから、同被告の主張は採用できない。
2 (過失相殺の主張について)
(一) 被告センターは、須賀工業が原告に対し満水式受水槽の構造を問合せた際、原告は満水式受水槽の配管方法を説明しただけで、右配管方法を実施すると本件実用新案権を侵害するおそれがある旨を告げなかったが、原告が須賀工業にこれを告知していれば、須賀工業も本件実用新案権を侵害する配管方法を採用することもなかったし、ハ号物件完成前にその旨の告知があれば、その配管方法を本件実用新案権を侵害しない配管方法に変更することも可能であったから、本件実用新案権侵害事件が発生するに至った原因には、原告自身の過失も寄与しているから、損害賠償額を算定するにあたって、右原告自身の過失も参酌されなければならないと主張する。
しかしながら、本件全証拠によっても原告に右過失があったとは到底認められないから、同被告の右主張は採用できない。
(二) 以上によれば、原告の被告センターに対する本訴損害賠償請求は、前記金一二万円及びこれに対する不法行為の後である昭和六三年一一月一九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
3 (謝罪広告請求の当否)
原告は、原告及び被告森松は、いずれも受水槽の製造販売を業としているところ、被告らが原告の許諾なしに本件考案を実施したため、他の同業者に対し、原告が本件実用新案権を実施する権利を専有するものではなく、何人でも自由に本件考案を実施できるものと誤認させるに至り、原告が被告らの本件実用新案権侵害行為前に、同業者等から受けていた満水式受水槽の製造業者としての信用を著しく害されたと主張する。
しかしながら、右信用毀損の事実を認めるに足りる証拠はない。前記三2、3で判示したように、本件考案の技術的範囲は満水式受水槽全部を含むものではなく、その一部に関するものであるにすぎないこと、前示の原告自身の本件考案の実施状況に照らすと、被告センターのハ号物件使用により、謝罪広告を必要とするほど原告の業務上の信用が害されたとは到底認められない。原告の同被告に対する謝罪広告請求は理由がない。
六 結論
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 庵前重和 長井浩一 辻川靖夫)
(別紙)広告目録
謝罪広告
当会社らが貴殿の登録新案第一四五七二三五号実用新案権に抵触する満水式受水槽を製造販売し、使用したことにより、貴殿の権利を侵害したことは、甚だ申訳ない次第であります。
つきましては、今後、貴殿の権利に抵触する満水式受水槽の製造、販売、使用を致さないことはもちろんその侵害となるようなことは一切致しません。
ここに陳謝致します。
平成 年 月 日
岐阜県本巣郡糸貫町見延一四三〇番地の八
森松工業株式会社
代表取締役 松久信夫
京都府宇治市伊勢田町西遊田九〇番地
株式会社京都総合食品センター
代表取締役 片山健三
大阪市平野区加美北一丁目二二番二三号
三成鉄工株式会社 殿
但し、広告寸法は次のとおりとすること。
(1) 標題 一八ポイント
(2) 本分 一〇ポイント、但し登録番号はゴシック
(3) 宛名及び社名 一二ポイント、但しゴシック
(4) その他 一〇ポイント
以上
(別紙)物件目録
ハ号物件の説明書
一 図面の説明
第1図は受水槽の平面図
第2図は受水槽の正面図
第3図は受水槽の右側面図
第4図は第2図のA-A線断面図
第5図は給水機構の概略図
二 ハ号物件の説明
ハ号物件は、第1ないし第5図に示す受水槽であって、ステンレス鋼製主水槽(1a)の上部に小なる補助水槽(1b)を内部連通状に形成している。
前記主水槽(1a)には、補助水槽(1b)内を通して水供給管(2a)と、水位調整装置(3a)が具備されている。
前記補助水槽(1b)には、水供給管(2b)と水位調整装置(3b)が具備されている。
ハ号物件、水供給管(2a)(2b)によって主水槽(1a)内に給水され、水位が主水槽(1a)の設定水位(5a)に達すると、水位調整装置(3a)が作動してその導水管(3a′)を介して定水位弁(3a″)が閉じられ、水供給管(2b)からの給水が停止し、引続いて水供給管(2b)からの給水が行われて主水槽(1a)内の推移が上昇し、該水槽(1a)内の空間を満たして補助水槽(1b)内に上昇し、補助水槽(1b)内の水位が設定推移(5b)に達したところで水位調整装置(3b)が作動し、水供給管(2b)からの給水を停止し、内部水位を常時補助水槽(1b)内にあらしめるようにしている。
以上
第1図~第5図
(別紙)図面一~図面四
実用新案公報
実用新案出願公告昭五六-一七五八三
公告 昭和五六年(一九八一)四月二三日
考案の名称 受水槽
実願 昭五〇-一六七七五五
出願 昭五〇(一九七五)一二月一〇日
公開 昭五二-七八九六五
昭五二(一九七七)六月一三日
考案者 藤原修
富田林市大字廿二五〇番地の二
出願人 三成鉄工株式会社
大阪市平野区加美北一丁目二二番二三号
復代理人 弁理士 鎌田文二
引用文献 実開 昭五〇-六九四五三(JP、U)
実用新案登録請求の範囲
ステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し且つ両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させ、内部水位を常時補助水槽ないにあらしめるようにしたことを特徴とする受水槽。
考案の詳細な説明
本考案はビルや団地等の地下に設置される受水槽、又は屋上に設置されている高架水槽に係るものである。
この種受水槽は耐久性を持たせるためにステンレス鋼で製作されている。
ところがこのステンレス水槽がその気相部分に於て極めて激しい腐食を受ける。その理由は一般に次の様に説明される。
即ち水道水の殺菌に用いられた塩素ガスは水中に多少溶存し、この水が受水槽中に放出供給される際に溶存している塩素ガスが放出され水槽内の空間部に拡散される。そしてこの塩素ガスは再び水槽内の空間壁や天井に付着する水滴中へ再溶解する。この過程において塩素ガスは水と反応して塩素に変化するのである。
ところでステンレス鋼は極めて耐食性のよい金属であると考えられているが、塩酸に対しては極めて腐食を受け易い欠点を有する。
例えば受水槽をステンレス鋼SUS三〇四で製作して使用した場合に水槽内空間部の腐食状況を観察した結果、最も甚しい地区では板厚二mmのステンレス鋼で製作した水槽が三カ月の期間に孔食によって貫通し、更に全面に激しい発錆が見られた。そこで空間部に相当する処の材質を高級なSUS三一六で製作し設置してみたが約六カ月後同様な発銹が現われた。しかし上記水槽の何れの鋼種でも水位以下の常時水中にある部分は全く腐食発銹が見られなかった。
本考案は上記腐食の状態に鑑み此の種水槽に改良を加えたものである。
以下本考案の実施例を図面に基いて説明すれば、1aはステンレスよりなる大なる主水槽、1bはその上部に内部連通状に付設した小面積の補助水槽である。之等の水槽には夫々水道からの取水配管2a、2bが接続されており、且つ之等の配管には水位調節装置3a、3bが組込まれている。4は給水管を示す。
この水槽は次に述べる如く作動する。
先づ水は取水配管2a、2bによって水槽1a、1b内に供給されるが、水位が主水槽1aの設定水位5aに達したところで水位調節装置3aが作動し取水配管2aからの給水が停止し、引続いて取水配管2bからの給水が行われて主水槽1a内の水位が上昇し該水槽内の空間を満たして補助水槽1b内に上昇し、補助水槽内の水位が設定水位5bに達したところで水位調節装置3bが作動し取水配管2bからの給水も停止する。6a、6b、6cは空気抜き孔を示す。
本考案は上記せる如き構成であり、その受水槽はステンレス鋼製主水槽の上部に小なる補助水槽を内部連通状に形成し且つ両水槽に夫々水供給管と水位調整装置を具備させたものであるから、主水槽内は補助水槽部の水位調整装置に作用されることなく常時満水状態にあり、従って主水槽には全く腐食を生じないと共に、補助水槽部には従来と同様腐食を免れないがこの補助水槽は小さいため取替えの作業性に並に取替え費を著しく軽減し得るという効果がある。
又取水配管並に水位調節装置を上下の水槽に夫々具備せしめたことによって水位を確実に補助水槽の所定水位に保持させることができるという効果がある。
図面の簡単な説明
図面は本考案に係る受水槽の実施例を示す説明図である。
1a……主水槽、1b……補助水槽、2a、2b……取水配管、3a、3b……水位調整装置、5a、5b……設定水位。
昭和五〇年実用新案登録願第一六七七五五号(実公昭五六-一七五八三号、昭五六、四、二三発行の実用新案公報四(1) -八〔二九〕号掲載)については実用新案法第一三条で準用する特許法第六四条の規定による補正があったので下記のとおり掲載する。
実用新案登録第一四五七二三五号
記
一 第三欄一~二行「水位調整装置に作用されることなく」を「水位調整装置の作用により」と補正する。